A 取引高税 (Transactions Tax)

 取引高税は、1948年9月1日に実施された。これは、取引に対し一%の税率で課税するものである。賃銀の支払い、食糧管理法の適用を受ける主食に関する取引、政府が価格調整補給金を交付する物品に関する取引、原始生産者が生産する農産物、林産物、畜産物および水産物の販売、地代家賃、輸出取引、有価証券の取引、運送その他若干の重要でない項目について取引高税は課税されていない。取引高税は、製造、卸売および小売のすべての段階に適用される。この点においては、フランスの取引高税に似ている。

 1949年の始めまで取引高税は、営業者に対して印紙を前売する方法で徴収されていた。この方法は、納税者から多くの不平を生せしめたので、日本政府は、この規定を廃止した。取引高税は、現在納税者の提出する申告に基いて、毎月徴収されている。一月の総取引金額三万円未満の営業者は、免税されている。

 取引高税は、多額の収入を挙げ得ることをまだ証拠だてていない。1949年3月31日までの七カ月間において、取引高税の収入は、現金納付額(納税者の申告に基いて徴収される税)六十一億円と印紙販売金額百四十七億円であった。しかし印紙販売金額は全部その会計年度に属せしめるべきではない。若干の納税者は、印紙を購入しすぎたので、現在の会計年度における取引高税の納付にあてるため現在これを返還しつつあるようである。

 今会計年度の収入見込みは、四百五十一億円である。これは、前年度中に購入された印紙が使用され本年度の税金の納付にあてるため返還されることを見越して余裕をつけるためのに四十億円ばかり差引いた後のものである。

 取引高税は、売上税のうちで最も洗練されないものの一つである。それは、自己の原料で仕事を始め、最終製品を生産し、これを販売する一貫企業にとっては有利である。
 原材料製造業者、卸売業者および小売業者を含む独立の競争企業は、取引高税の下においては不利となる。というのは一方一貫企業は、税金をただ一度支払えばよいのに反して彼等は税金を取引きする毎に支払わねばならぬからである。この点については、後の第十三章事業税のところで論ずるし又実例を挙げて説明する。この不公平即ち経済的危険は、税率が一%である限り、それが若干の場合においては、重要であるけれども、甚だしくはない。しかしもし税率が、二%に引上げられたとするならば、一貫企業を更に強大ならしめるであろう。小売売上税、生産税または付加価値税(第十三章参照)は、この欠点を持っていないのである。

 広汎な小売売上税は、特に大都市以外において帳簿の不適当なまたは帳簿もないような小売店舗が企業の大部分を占めている点を考えると、現在の日本においては、恐らく実際的ではなかろう。一ヶ月間に若干円の取引金額を免除することは、それが不適当な帳簿を持つ小売業者を除外するに足る程の大きい金額であるならば、大部分の課税対象を捨て去ることになるであろう。生産者課税は、二重課税を避けようとするならば、それに必要な余りにも多くの特別手続規定を必要とすることになる。

 取引高税は、納税者が総収入を記載した申告書を提出することを勿論必要としている。この点は、申告納税をする営業者の所得税の行政事務に役立つといわれている。納税者の総売上金額が判るや否や、その純所得については賢明な確定が行われるかも知れない。しかし、何故総売上金額に対する課税が、所得税の納税者から総売上金額の申告書を徴することを若干でも容易ならしめるのかということを理解することは困難である。
 その効果は、寧ろ反対であるように思われる。もし納税者が自分の総売上金額を明かにするならば、自ら所得税の更正決定のみならず、一%の取引高税の更正決定を招くことになろう。所得税担当官が所得税の納税者に対して、総売上金額の月次報告を退出することを要求することを妨げるものは、何等ない筈である。

 更に、われわれの旅行中得られた若干の印象も含んで、われわれの手許には、取引高税は、所得税又は酒税よりもうまく運営されていない。所得税の一部たる源泉徴収程うまくいっていないことは勿論であるということを示唆する証拠がある。

 取引高税は、あらゆる種類の売上税のように、消費者の個人所得を計算に入れると、貧者に非常に重く当り、累進的というよりも寧ろ逆進的である。この点においては、主食及び住宅の貸与を課税していないので、この議論は、若干適用できない。恐らくより重要なことは、納税者たる営業者が、税金を転嫁することができないときに生ずる不公平であろう。例えば、営業者が、売上金額に対して五%の平均利潤を得ているとする。この一%の売上金額に対する課税は、もしそれを誰か他の者に転嫁することができないとすれば、彼の純所得に対しては二十%の税金となるのである。これを売上金額に対する二十%程度の利潤を得る事業者にとっては、この一%の税金は、所得に対して五%の税金に等しい。

 全く取引高税は、日本の税制のうちで、最も将来性の少いものの一つである。これを引き上げると、必ず重大な経済的不利益が生ずる。取引高税は現在の税率では、税務官吏によっても又納税者によってもそんなに重要なものとして取扱われそうにもないし、従って、甚だ実効の挙がらない税に除々に落ちぶれるであろう。

 従ってわれわれは、政府の歳出が前述の第三章第一節において示した程度まで削減させる場合にのみ取引高税を廃止することを勧告する。換言するならば、1950-51年度における国税に関する減税の優先度を前述の第四章乃至第七章で勧告した所得税(法人税を含む。)の軽減および織物消費税の廃止並びに物品税の軽減(第十章参照)に置くことをわれわれは勧告する。同時にわれわれは、それと等しい重要さを酒税について前に勧告した引上げと富裕税および取得税の採用とに置いている。結局、これらのものが改められ、政府の歳出が第一表において推定した程度まで削減されるならば、取引高税は、1950年4月1日からこれを廃止すべきである。

B 物品税 (Commodity Excises)

 多種類にわたる物品に対して、一連の製造者消費税が課せられている。その税率は百%、八十%、五十%、三十%、二十%の五段階である。これは製造者価格に対する税率であるから、小売価格に対する税率とくらべると、はるかに軽少なものといえる。今一例をあげると、税を課せられないと仮定した場合には、小売価格は製造者価格の二倍となる商品が、甲類に該当して百%の税を課せられたとすると、税を課せられないと仮定した場合の小売価格の五十%に相当する額を課税されることになるのである。

全般的にいって、われわれはこの税を存置するように勧告する。物品税は、奢侈品または準奢侈品消費に示される担税力に対する間接的課税方法である。

 甲類物品に対する百%の課税は極めて少額の収入にしかならない。即ち今年度の二百七十億円の合計見込額のうちの約一億四千万円を占めるにすぎない。これは一つには広汎な脱税にもよるといわれている。
 大蔵省の提供した資料によって推定するとこの税率を五十%に下げた場合、この税収入は、九千万円になるであろう。しかし原則的にわれわれは、宝石などのような超奢侈品に対して百%が高過ぎるとは信じない。われわれは全く徴税上の理由から税率を七十%まで引き下げるように勧告する。

 乙類物品とは写真機、写真用機材、蓄音器、銃、双眼鏡、ある種の楽器、ライター等を含み、その税率は八十%である。これによる収入は、十三億円であるが、この税率を三十%に引き下げると、収入は六億千百万円に減少すると見積られる。われわれは、乙類商品の税率を六十%に引き下げるように勧告する。

 丙類商品の税率は現在五十%である。それはレコード、扇風器、電気及び瓦斯ストーブ、冷蔵器、金庫、鋼製家具、煙火およびトランクを含む。この税収入は今年度分、五十三億円と算出されている。大蔵省が提供したこれに関係ある収入見込みでは、税率を三十%まで引き下げると、収入額は三十六億円に減少するようである。しかし、これは余りに収入を犠牲にし過ぎるものである。これらの物品に対する税率は原則として乙類物品の税率と同率であるべきではない。しかし実際には乙類と丙類とを精緻に区別することを正当とするような大きな差異はないのである。従って、われわれは、丙類物品については五十%の税率を維持するように勧告する。これは大体二十五%の小売課税に等しい。

 丁類物品とは、運動用具、時計、扇子類、簾、ラジオ聴取器、携行用の電灯、計算器及びタイプライター等を含んでいる。現行税率三十%はこれを維持すべきである。これは小売価格に対しては十五なし二十%にあたるに過ぎない。本年度丁類物品の税収入は、七十三億円と算出されている。

 戊類(新に丁類となるべきもの)物品は、電球、ミシン、小型自動車、安全剃刀、靴、板硝子、敷物類等である。税率は二十%であり、この収入は百六億円と推算される。われわれは、靴を含む履物は生活必需品であるから、これを免税とするほかは、現行税率を維持すべきことを勧告する。
 この免税は二億七千六百万円の収入減となるだけである。

 右にのべた物品は第一種物品に属するものである。第二種物品は五つの物品を含むのであるがその各々について従量税率が定められている。即ち燐寸 千本につき六円。飴、ふとう糖[#ぶどう糖]および麦芽糖 百斤[”1斤=600g]について二千七百円。サッカリンおよびヅルチン、一瓩[#キログラム]について六千円。蜂蜜 百斤について二千七百円。緑茶 一貫[#1貫=3.75kg]について五十円。これらの合計収入見込額は二十五億円である。われわれは五品目の一つづつについて勧告をするに十分な検討を行うことができなかったから、これについては爾後検討するまで現行税率を維持すべきことを示さする。この研究は、価格が非常に高騰したためかかる従量税率が軽きに失するに至ったか否かを確かめるべきであり、また従価税率に変更した方が適当ではないかという点を考慮すべきである。

 ここに勧告する税率の下において、且多少の生産増加を考慮に入れれば1950-51年度の物品税収入は、1949-50年度と同水準即ち二百七十億円にとどまるであろう。

 個々の物品については若干の改正が必要のように思はれる。われわれは全品目の一つ一つについてここでのべることはできないが、一つの全般的原則を勧告しよう。それは、専ら、または主として事業に使用される物品、たとえば計算器のようなものは、物品税から全く除いてしまうべきである。奢侈的消費の概念は工場および事務用品に対する支出については概して適用されないものである。

C 織物消費税 (Textile Tax)

 この税は、絹、人絹、毛織、木綿、ステープル・ファイバー製品の生産者に課せられる。税率は絹人絹及び毛織製品四十%、木綿およびステープルファイバー製品十%である。

 衣料に対する課税は食糧品に対する課税に似ている。それは生活必需品に対する課税の一つである。生活必需品でも場合によっては課税されねばならぬこともある。たとえば、家屋税がそれであり、われわれは家屋税は、地方団体の賦課徴収に特に格好のものであるという理由でその増徴を勧告しているところである。しかしこの理由を援用して、織物製造に対する課税の根拠とすることはできない。

 なるほど、織物の購入には、場合によっては奢侈的分子もあるのである。これは恰も食糧の購入、住居において奢侈的分子があるのと同様である。絹は一般に奢侈品だと認められるとするならば、この奢侈部分だけは特に別に扱われて課税されてもよいのであるが、絹織業者は現在、輸出市場の急激な縮小に対処せねばならない困難な時期に立っているのであり、この対策は何れにせよ将来厳しいものであって、もし百分の四十の税率が存続されるとしたら、いよいよ困難を加えてくることになるであろう。

 本年度の織物消費税の収入額を織物の品種別に示すと左の通りである。(単位億円)

綿糸
ステープル・ファイバー
黄麻糸
合成繊維
特紡糸
ガラ紡糸
その他の糸
生糸
絹紡糸
絹紡紬糸
人絹糸
亜麻糸
苧麻糸
梳毛糸
紡毛糸
抄織糸

a 五千万円未満

[# 表中4行目 合成繊維は英文では a 五千万円未満となっています]

 われわれはすべての織物消費税を完全に撤廃するように勧告する。それは1950年度初等から実施すべきである。

 しかし、もし四十%から零までというような相当な減税が三月末に行われるということが九月に発表されると、織物販売業者および一部の一般消費者は全般に減税実施後迄成るべく絹の買付を見合せるようにするであろう。その結果生産者の在庫品はたまり運転資金は不足し、更にその結果生産が減退し製糸産業における失業を一時的に悪化せしめることにもなろう。この産業におけるかかる不必要な動揺を避けるために、絹および人絹に対する課税率をできるだけ速やかに十%に軽減し、もしそれが容易にできることであればこの軽減は1949年9月1日に遡及して実施せらるべきことを勧告する。かくすることによって十%の課税率は綿製品に対する十%の課税率と共に1950年4月1日をもってこれを廃止することができる。この予期的な減税の故に生ずる本会計年度の残存期間中における減収は比較的少ない筈である。なんとなれば、もし減税が行われないとすれば売上量は会計年度末にかけて極端に下落し、収入もまたこれに伴って減少するからである。売上げ量を維持することによって減税を直ちに行うことはより高い税率を維持する場合よりもより多くの収入をもたらすことすら可能である。綿製品に対する税率を十%から零%に下げることはかかる深刻な発表影響を与える程のものでないと考えられる。

D 砂糖消費税 (The Suger Tax)

 国内産砂糖には北海道産であれば一斤二十円(一斤は〇・六瓩)、その他の地方産であれば一斤十八円の割で課税されているが、砂糖消費税からは年五億円の収入があるにすぎない。

 1948年12月以前には輸入砂糖は無税であったが、1948年12月の始めに輸入砂糖には、粗糖、精製糖共に、斤二十円の税金がかけられた。これは緊急政策として、1948年12月の追加予算によって課されたのであったが、為替換算率が変更されて輸入円価格が上ったので、翌年四月に廃止することを許された。

 1949年50会計年度には三十万噸以上の砂糖が輸入せられるが、国内生産はわずかに一万噸にすぎないだろうと推定されている。

 1948年には砂糖が主食代替品として配給されたので、砂糖の輸入および消費高は特に多かった。1948年12月以後はこれに代って、砂糖は一日千四百四十カロリーの最低基準の一部として配給せられた。炭坑夫と砂糖大根栽培者は基準配給量以外に砂糖の褒賞配給を受けている。

 日本側の多くの者は、多額の歳入を得るために、輸入砂糖に再び高率消費税をかけるよう進言した。砂糖は半贅沢品で、貧困者は配給品を闇に流すといわれている。しかし、当局が砂糖を半贅沢品と考えるならば、恐らく砂糖を輸入しないであろう。半贅沢品を購入するために弗資金を費消するのは現在の方針ではない。砂糖が現在の方針の下に輸入される限り、贅沢品としてそれを課税することはできない。食料必需品に課税することにはわれわれは好意を持たない。輸入糖、国内産糖共に消費税では平等に扱わるべきである。よってわれわれは国内産砂糖への課税廃止を勧告する。

E 揮発油税 (The Gasoline Tax)

 1948年の後半期において、揮発油税はその採用を保証するに足る収入があることが明かになった。地方政府は、この新税を地方政府の税体系の一部とすることを要求した。しかし、大蔵省は、本税を国税とすれば二カ所の輸入品精油所および四カ所の国産品精油所において徴収できるから、徴収上の面倒少くて済むことを指摘した。この理論は勝をしめたが、われわれもこれに賛成する。

 徴収を考慮している間に、この税からの歳入を道路の改修に割り当てることを企てる幾つかのグループがあった。これは、予算上の制限が特定の歳入源を指定された歳出に充てることを不可能ならしめるという理由により、退けられた。しかし中央政府は多額の公共事業費を用意したが、この事業費のうち、道路改修および道路建設にあてられる部分は、揮発油税収入を超えている。その上、日本においては、道路は、アメリカ合衆国におけるよりも多く、荷車や自転車に使用されている。

 揮発油税は1949年5月1日に国税として実施された。税率は消費者小売価格の百%である、事務の簡素化および徴税上の能率化を図るために、本税は大口販売に対する消費者価格に置かれている。かくして本税は、小口販売の時価一キロリットル一万七千二百円の代りに、本税採用当時普遍的であった(揮発油の小口販売向け以外の)消費者価格一キロリットルにつき一万六千四百五十円の百%となっている。この結果、税込み価格は一ガロン約百三十一円、すなわち約三十仙[# 通貨単位:セント]になるが、それは一ガロンにつき凡そ十五仙の税を含んでいる。

 1949-50年度間の十一カ月間(実際は、正規の徴収が一カ月遅れたので、十カ月である)の歳入見積りは四十一億円、すなわち平年額四十九億円である。

 欠減および蒸発による三・七%の税金の控除が認められている。一%の利子負担の追加控除がとり上げられたことがあるが、これは税額控除の形でなく公定価格のうちに織り込まれた。この一%の控除を許すことは、揮発油事業に、揮発油税前払いの為の資金借入費(又は揮発油税支払いの担保として使用するために銀行からの国債の借入)を補償する目的であった。同工業の税の支払と消費者よりの税の徴収までの期間は、平均六十日乃至九十日と解されている。

 本税は最終消費者により負担されるけれども、徴収は主要な、輸入品及び国産品精油所においてなされる。現在においては、輸入揮発油(全消費量の九割二分に当る)は二ヶ所の輸入品精油所において課税される。その上、八ヶ所の国産品精油所の中四ヶ所のみが現在操業しているので、揮発油税の徴収場所は全部で六ヶ所に減じている。

 1948-49会計年度において、揮発油の全消費量は三十一万九十五キロリットルで、その中の二十六万八百三十九キロリットル即ち八十四%が自動車用であった。1949-50年度には全消費量が三十六万二百四十四キロリットルより四十一万八千五百キロリットルになると見積られる。四十一億円という見積りは、三十六万二百四十四キロリットルを基礎としている。

 この新税は合理的で有効であるように見受けられる。しかし判断を下すには時期尚早である。われわれは、潤滑油や燈用石油等の如き他の石油製品に課税する可能性について研究することを提案する。

F 関税 (Customs Duties)

 1930年においては、関税は日本の歳入の相当な部分を占めていた。しかし現在は取るに足らぬ額で、予算中今会計年度分に見積られたのは三億円である。事実上、輸入品は全部対日援助計画によりアメリカ合衆国から送られる物資か、或は占領軍要員用の輸入品か、または日本政府の外国貿易基金による輸入品かで構成されている。

 日本の外国貿易政策を分析しまたはその将来を推測することはわれわれの報告書の範囲外のことである。現状において、関税歳入から殆んど、或は何ものも期待出来ない理由は無論明瞭である。われわれはただ二つの一般的考察しか出来ない。

 第一は、戦前に施行されていた関税法が現存していることである。これは勿論従量税に関する限り、貨幣単位のインフレーションにより酷く歪められて来た。従量税または従価税いづれにしても、これらの関税は実施されていない。これ等の関税が実施さるべきでないことにはわれわれは同意するけれども、現存法律を無視してこの目的を達成しようとすることは健全な方針ではない。法律とその実施とは直ちにその何れかまたは双方を改めることによって相互に一致するようにしなければならない。

 第二に、日本は歳入を得るために関税に頼る必要はない。輸入品には、国産品に課税するのと同じ消費税を課すべきであるが、予算上の立場ではこれ以上には輸入税を課する口実はない。課税方策としては、斯様な関税は国産品を優遇するのであるから、殆んど或は全然推奨出来ない。
 国内工業に対する補助を含んだ外国貿易政策の手段としての関税はわれわれの研究の範囲外にある。

G その他の間接税 (Other Indirect Taxes)

 以上の外、歳入の少い二三の間接国税があるが、われわれは綿密に研究する余裕がなかった。従って、ここではこれ等について示さを付して言及しておくにとどめるが、それらは十分な勧告と、考えてほしくない。

 清涼飲料税は、第一種に対しては、一石四千五百円、第二種にに対しては一石八千円、第三種に対しては一瓩三千円の税率で、生産者から徴収される。これらの税率は1949年5月1日に定められたもので、1948年7月かに実施された税率、即ちそれぞれ五千三百円、九千五百円、三千五百円に比較して大巾な減税になっている。一般に、われわれは本税は適当な種類の税ではないと信ずる。清涼飲料品は、酒精飲料(麦酒を除き且つ若干の範囲のものまでである。)よりも、氷菓子、菓子、およびこれら類似品と競争するものである。これらの競争品目に適当に課税をすることはできない。よって清涼飲料品にのみ課税することが不公平な競争関係の因をなしている。その上、これら競争品目が課税されるとしても、この特殊な甘口の半贅沢品目に特別に課税する理由があるようには思えない。

 株式、債券およびその他の有価証券の譲渡は、有価証券仲買人を買受人とする株式譲渡には〇・二%、株式取引所におけるその他の株券の譲渡には〇・四%、その他すべての株券の譲渡には〇・八%の税率で課税される。株券以外の有価証券の譲渡は、〇・一%、〇・二%、〇・四%とそれぞれ課税される。この種の税は殆んど一般に行われている、しかしそれを正当づけることは難しい。もしもそれが有価証券譲渡を阻む(そう云った目的には吾々は賛成しないが)つもりならば、この種の税は目に見える程の効果はない。本税は主として直接税が今日の段階にまで発達していなかった時代からの歴史的に伝わってきたものである。

 汽車または船舶による旅客運賃にも税が課せられている。その税率は五%であるが、他に寝台券および急行券には二〇%課税される。

 贅沢支出税として、旅行に対する特殊の便宜への高率税は当然持続するべきであるが、普通の旅行に特別税を課すことに、正当な理由があるとは思えない。故に五%の税は廃止すべきであろう。

 西洋諸国の税に通常見出されるトラムプ税に似たものは、マーヂャン牌(一セット千五百円)および他の骨牌(四色牌等の三十円を除いて百三十円)の課税がある。これらの項目は恐らく半贅沢品としての課税に適したものであろう。

 重要な収入源とは思われないが、一連の税率を包括した登録税と取引所税とがあるが、それらに或る特別な理由が存しないならば、恐らく廃止すべきであろう。

 最後に、委任状、預金通帳および類似の契約書類或いは受取書に貼布される一連の印紙税がある。これらもまた殆んど全く間接税に依存しなければならなかった制度から受けつがれて来ているものである。しかし1949-50年度の本税収入は七十億円(これにはその他の雑多な間接税のいくつかが含まれているであろう)と見積られる。ここ一、二年間に印紙税の廃止を真面目の考慮することが可能になろう。本税は長期の税制計画には不要となるものである。

H 社会保障税 (Social Security Taxes)

 現在、社会保障計画の数々の部門を賄うために、給料に対して数種の税が課せられている。社会保障計画の財政を完全に研究することは、われわれの使命の限りではない。われわれの使命は、随時支払制と資金積立制の長短比較の研究を包含するとも解釈されるかも知れぬが、このことは利用し得る時間が短い点と一般会計の収入源となる租税を分析をすると云う優先的な仕事の大きさとを考慮すれば、適当でないと考えられた。
 更に、この問題は、1947年に日本を訪問した社会保障使節団によって、その年の十二月に提出された二百六十頁の報告書において、徹底的に検討されたのである。

 しかしながら、われわれは税率、課税対象となる給料の定義および徴収機関の多様性について注意を喚起する必要があると思う。国の機関としては、労働省と厚生省は、大蔵省の仕事と平行して給料を基礎として徴税している。このため、多くの納税者は、三種類の徴税官吏および調査官吏と交渉しなければならない。その結果は、恐らく単に社会保障計画だけでなく、一般収入計画を阻害することになる。労働省は、雇主に失業保険の給料税の計算、申告および納付をすることを認めるが、厚生省は、雇主に給料に関する資料の提出を求め、自ら健康保険給料税の計算をする。健康保険税は、月給の最初の二万四千円に基礎をおく。養老保険税(厚生年金保険)は月給の最初の八千円にのみ適用される。また賃金および給料から源泉徴収される所得税は、賃金の総額に基礎をおく。

 それ故にわれわれは、(次に記載する条件のもとに)次の二点を勧告する。第一は、社会保障税の徴収は、大蔵省に委託し、同省はその徴収と賃金および給料に対する源泉課税の徴収とを統合すること。第二は、まちまちの額を超える部分の賃金は、課税の対象とならないという現行制度の代りに単一の課税標準をすべての社会保障課税に適用すること。徴収の統合は、最近米国の一徴収地区において試みられ顕著な成果を挙げたので目下これを拡大する計画が進められている。

 注意すべき条件は、これらの変更が社会保障計画のいかなる重要部面をも危うくすることは許されないということである。たとえば、現行の労働者災害保障法においては一雇主の怠慢はかれの特定の使用人を危殆に陥らすことになる。使用人等はその雇主が保障料を支払わない限り、利益を享けられないのである。われわれは、統合徴収の方法の下で、納税者が延滞している時には、労働者災害保障掛金が他の税種のクレームに優先するように仕組むことを勧告する。これに類似する技術的な点はなお発見されるであろう。しかし、これ等の点が十分克服されて、ここに提案した改革が可能となることを期待する。この改革はもしあまりに遅れると納税者の協力と従って、租税制度全般とに極めて不利な反響を生ずるかもしれないのである。

I 煙草以外の政府専売 (Government Monopolies Other than Tobacco)

 塩、樟脳及び競馬の政府専売ないし独占は、それらが収入の一部となるという理由だけで、この報告に関係を有する。

 日本で使用される塩の四分の三が輸入によらねばならぬので、塩は専売となっており、且つ政府はこの基礎物資の配給を低価格で行うことを欲するのである。塩の専売は、1949-50会計年度において、三十七億円の損失額を見込まれている。その結果、われわれの考慮の対象となるような収入科目は存しない。われわれは、勿論塩の専売が差し引き国家の純財源になるよう変更せよと勧告する考えはない。

 樟脳は、その最上の収穫期に達するのに四十年を要する樟の伐採を取締るために主として政府によって統制されている。政府の専売は配給のそれであって、育成あるいは精製のそれはない。樟脳の専売は、総予算からみれば大した額ではないが、本年度六千百万円の収益を産むと見積られている。またここにおいても、われわれが注釈を加える必要のあるような、収入上の意味は存在しない。

 民間の持っていた競馬の独占権は、1948年に紙夫に引き継がれたが、現在は農林省の直接監督の下に、財政上特別会計として取扱はれている。今年度の見込では、政府はその業務が旧の私営に戻され(必ずしも独占ではなく)且課税された場合ほどには収入を挙げえないであろう。われわれは収入の考慮を別にして、この競馬の政府独占事業の現況について判断を下しはしない。収入の点だけを考えれば、競馬は歳入目的の政府独占事業としては満足な対象ではないであろう。

[# 第10章おわり]